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大阪地方裁判所 昭和56年(わ)608号 判決

主文

被告人を懲役二月に処する。

この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これを引用する(但し、第二の一の事実中「一五〇・三キロポスト」とあるのを「一五〇・二キロポスト」と訂正)。

(証拠の標目)《省略》

(法令の適用)

判示各所為 刑法六〇条、六二条一項、道路交通法一一八条一項一号、六四条

刑種の選択 懲役刑

法律上の減軽(従犯) 刑法六三条、六八条三号

併合罪加重 同法四五条前段、四七条本文、一〇条(判示第一の罪の刑に法定加重)

執行猶予 同法二五条一項

(被告人、弁護人の主張に対する判断)

被告人は、被告人が判示斉藤及び横山に供与した国際運転免許証は日本で通用する有効なものと思っていた旨主張し、弁護人も被告人には違法性の認識がなかった旨主張するが、《証拠省略》によれば、被告人が本件国際免許証が日本で通用する有効なものではないことを認識していたことは明らかであり、被告人及び弁護人の前記主張は採用できない。

更に、弁護人は、前記斉藤及び横山の運転行為は同人らの意思のみに基づいてなされたものであり、被告人の行為とは無関係であるから幇助罪は成立しない旨主張するが、幇助罪が成立するためには、幇助者において正犯の犯罪行為を認識しこれを認容してそれを助けその実現を容易ならしめることが必要であるが、正犯の行為の日時、場所等具体的事実のすべてについてこれを認識することまで必要ではなく、無免許の者に対し、不正に入手した国際運転免許証を供与する行為は被幇助者の無免許運転行為を容易にさせる行為であり、かつ、被告人において、前記斉藤及び横山が無免許運転をすることを認識、認容していたことは前掲各証拠により認められるので、無免許運転の幇助罪が成立することは明らかである。

なお、弁護人は、本犯が罰金刑に処せられているにすぎないので、刑の均衡上、被告人を処罰するだけの可罰的違法性がない旨主張するが、被幇助者が正犯として違法、有責である以上、幇助犯が可罰性を有することは明らかであるので、弁護人の右の主張は採用できない。

従って、被告人、弁護人の主張はいずれも理由がなく、前掲各証拠により判示事実を認定する次第である。

(裁判官 赤木明夫)

〈以下省略〉

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